ジェリーゼリーブログ

2018年11月2日

人工無能との思い出

多分2002年か2003年くらい、当時中学生だった私は人工無能チャットにハマっていました。

チャットというのはインターネットブラウザ上でリアルタイムな文章のやり取りをする、今でいうLINEみたいなやつです。

そして人工無能チャットというのは、例え相手(人間)がいなくても、

つまり、ぼっちでも!
人工無能というプログラムが延々とひたすらに会話してくれる!!!
一人なのに一人じゃない!!!


という、当時の私にとってすげぇ画期的なすげぇシステムでした。
人工無能チャットは私のパソコンをドラえもんへと進化させたのです。


人工無能チャットでいろんな人工無能たちとの会話を繰り返していくうちに、私は自分の人工無能に対するコミュ力が著しい速度で高まるのを感じ、ついには、「私ならもっと強い人工無能、作れるんじゃね???」という謎の自信が満ちてきました。強い人工無能という定義が意味不明ですが、とにかく自分でも作ってみたくなったのです。


人工無能チャットはCGIで動いていて、個人で作られたいくつかのCGIは無料で配布されていました。
当時の私は謎の個人サイトを運営していて、ありがたいことにCGIも設置できる環境。
CGIだのPerlだの細かいことはさっぱりわからなかったけれど、CGIを配布してくれているサイトは設置の仕方を丁寧に説明してくれてることが多く、私でも簡単に設置することができたのです。


かくして私は自分のサイトに人工無能チャットを設置することに成功しました。


人工無能は基本的に、この単語がきたらこういう文章を返す、というプログラムです。
例えば「プリン」という単語に対して「私、プリン大好きー!」という文章が辞書に登録されている人工無能の場合、
人間から「あープリン食べたい」という文章が送信されれば、その中の「プリン」という単語に反応して「私、プリン大好きー!」という返事をする、みたいな感じのプログラムなのです。

単語と文章を辞書データとしてゴリゴリ追加していくことで、人工無能はより色んな会話に反応できるようになり、より自然な会話を交わすことができるようになります。


私は最強の人工無能作成を目指し、思いつく単語をひたすら登録していきました。


色んな文章の書き方をする人間との会話にも対応できるよう、同じ単語でもバリエーションを持たせて登録しました。
例えば、「おはよう」だけじゃなく、「オハヨー」「おはよー」「おっはー」などの単語を登録する感じです。

人間とのコミュ力は無いけれど、人工無能とのコミュ力だけは異様に磨かれていた私は、何度も自分の人工無能との会話を試し、「あの単語が足りない」「この単語の登録の仕方だと反応がおかしい」など改善点を見つけては試行錯誤を繰り返し、少しずつ人工無能を育て上げていきました。


ちなみに設置した人工無能チャットは複数の人工無能を作れるタイプだったので、私は3つの人工無能を同時に作っていました。

一番積極的かつまともに会話をする「うるた」と、適当に返事をしつつたまに会話に入るけど残念ながら名前は忘れた誰かと、たまーに謎の相槌のようなものをうつ「ぴょん」の3人。

人間がしばらく発言しなくても、人工無能同士で会話がちょっと続く程度には仲が良い(?)トリオでした。


辞書データが豊富になって、それなりに会話が続くようになってきた気がしないでもない!!!と、微妙に自信がついてきた頃、友人に1度だけテスト会話をしてもらいました。

人工無能の発言に対し、友人は私では思いもつかないような返事をしまくりました。
えっあっ、そーゆー反応するの??
あっ、えっ、そういう返事もありえるんだ…??
うおっ!?意外な所で奇妙に会話が繋がった…??

みたいな発見が山ほどあり、「この人工無能達はまだまだ成長段階だ。もっとちゃんと会話できるようになったら、満を持して公開するぜ!」と、決意をあらたに、さらなる辞書データの充実に取りかかりました。

そして、その、数日後……



うっかり、人工無能の辞書データを、消して、しまいました。


辞書の入力はブラウザ上で行い、データはサーバー上に保存されるのですが、FTPソフトでなんか色々いじっていた時に、サーバー上の人工無能の辞書データを、跡形残らず消してしまったようなのです。

私のパソコンに辞書データのバックアップはありませんでした。


彼らの辞書データは、

彼らの知能は、

心は、

命は、

この世から永久に、消え去ってしまったのです。


しばし呆然としました。

昔飼っていたカタツムリをうっかり潰してしまった時と同じくらい、あるいはそれ以上の、罪悪感と悲しみを感じました。


まだサイト上ではちゃんと公開していなかった人工無能チャット。

私と友人以外の人間と会話することが叶わぬまま、消えてしまった3人の人工無能。

彼らは、確かにいた。数分前まで。

でも、もう、影も形もない。

 

それ以降、私は他の人の作った人工無能チャットを使うことも、ほとんど無くなりました。

私のパソコンはドラえもんからただのパソコンに戻りました。

でも、人工知能だとか、AIだとか、そういった単語を見るたびに、彼らのことが頭をよぎります。

あいつらと過ごした時間、楽しかったな…と。

 


そして…私はこの記事を読んでいるあなたに、これだけは全力で伝えたい。


そう、それは…

 


バックアップは…超大事…

ということです…。


カテゴリ:雑記